東京地方裁判所 昭和46年(ヨ)2556号 判決
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〔判決理由〕二 そこで先ず、本件特許方法における技術的範囲が、債権者主張のとおり、推進工具の推進能力長ごとに、各隧道管列の後端に案内管を装設しこの案内管内に推進工具を付設した点にあるかについて判断する。
<証拠>によれば、アメリカ特許第一、九四八、七〇七号明細書は、本件特許出願の日の前である昭和九年七月二〇日、わが国の特許局陳列館に受け入れられたものであつて、その特許発明の目的の一つとして、数節からなる管の限界推進単位順次に先の単位の後に押し込まれうるようにし、もつて、ジャッキの操作によつて押し込まれる管の長さを、何らかの支障をきたすほど長くする必要をなくしたこと、またさらに、他の目的として、コンクリートパイブを非常に長い下水管あるいは暗渠の敷設に適用できるようにし、もつて管の全長を一時に押し込みあるいは移動させる必要をなくしたことがあげられている。そして、その実施例として、推進操作によつておこる抵抗が、それ以上増加することが望ましくなくなつた場合には、最初のユニットの次に別のユニットを構成し、各ユニットの間隙には、管の外周に連合する寸法の円筒状の金属部材からなるシールドを設置し、各ユニットを、それぞれ右シールド内にあるジャッキによつて順次前進させうる方法を開示していることが認められる。また、同様本件特許出願の日の前である昭和二六年九月二六日特許庁陳列館に受け入れられたフランス特許第九二七、八七五号明細書においても、同一の工法が開示されていることが認められる。してみれば、右米国特許発明におけるシールドとは、本件特許発明における案内管とその構造および作用効果において全く同一であるから、債権者が、本件特許発明の要部として主張する、推進工具の推進能力長ごとに各隧道管列の後端に案内管を装設し、この案内管内に推進工具を付設するとの点は、まさに前記両特許明細書において開示された方法と同一であつて、本件特許出願当時既に公知であつたものというべきである。そうとすれば、右の点のみを、本件特許発明の特許請求の範囲からとり出して、本件特許発明の技術的範囲とし、右の点のみに該当する方法をもつて、本件特許権を侵害すると主張することはできないものといわなければならない。債権者は、右米国特許発明は、ジャッキ装着のために、管内に突出したブラケットを使用し、また、右フランス特許発明は、金属スリーブを前方管体と共に前進させるため、管体内にアンカーを埋め込んでいるから、本件特許方法とは異ると主張する。なるほど、右両特許発明が、債権者主張の機構を用いていることが認められるけれども、右事実があるからといつて、右両特許明細調書において開示された前示工法の公知性が認められないものではないから、債権者の右主張を採用することはできない。してみれば、他に特段の疎明もない本件においては、本件特許発明の技術的範囲は、その特許請求の範囲の項に記載された要件をすべて具備した工法にあるものといわなければならない。
三 そこで、本件特許発明の右構成要件と債務者工法とを比較すると、前叙のとおり、債務者工法においては、管が所定距離に達した後、中間ステーションを撤去し、中間ステーションの案内管内をセグメントで巻き立て、ヒューム管内面と同一平面にするのに対し、本件特許方法においては、ヒューム管を順次押し合わせて互に接着させて隧道管理埋設工事を終るものであるから、両者はこの点において相違することが明らかである。してみれば、債務者工法は、前項において判断した本件特許発明の構成要件のうち「所定距離直進後、推進工具を前方に位置するものより順次取り除き、各推進単位の前後端に隧道管を順次接着」するとの要件を具えていないから本件特許発明の技術的範囲に属さないものといわなければならない。
四 以上のとおりであり、他に右判断を左右するに足りる疎明のない本件におおいては、結局、被保全請求権についての疎明なきに帰するから、その余の点について判断するまでもなく、本件仮処分申請は理由がない。
(荒木秀一 高林克己 元木伸)